こんにちは、行政書士の大場です。
前回は、「障害者優先調達推進法」とはどんな法律か、そしてそれが“販路拡大のチャンス”になる理由をお話ししました。
前回のブログはコチラ⇒<障害者優先調達推進法とは①>「障害者優先調達推進法」とは何か?
今回はもう少し踏み込んで、「実際にどんな仕事が対象になるのか」「どういう仕組みで発注されるのか」を具体的に見ていきましょう。
国や自治体が「買っている仕事」とは?
役所の中では、毎日のように物品購入や業務委託が行われています。
たとえば、次のようなものが対象です。
・清掃・草刈り・除雪などの軽作業
・封入・封かん、宛名印刷、発送代行
・チラシ・パンフレット・名刺の印刷
・ノベルティグッズ・記念品の制作
・農産物・お菓子などの物品販売
・ホームページ更新やデータ入力などの事務補助
これらは「物品調達」または「役務(サービス)調達」と呼ばれ、B型事業所でも受託可能な業務が多く含まれています。
仕組み①:毎年、自治体が「調達方針」を公表する
障害者優先調達推進法では、すべての国機関・都道府県・市町村に対して、毎年度「調達方針」を策定・公表することが義務づけられています。
たとえば・・・
・どんな分野で障害者就労施設から調達を増やすのか
・今年度の目標金額・目標件数はどのくらいかといった内容が明示されます。
宮城県の例
「印刷・清掃・封入封かん業務など、引き続き障害者就労施設からの調達を推進する」
(令和6年度 障害者就労施設等からの物品等調達方針 より)
つまり、「何を買いたいか」は毎年公表されており、営業のヒントがすでに公開されているということです。
仕組み②:調達実績が「数字」として公表される
この法律のユニークな点は、「どのくらい買ったか」を各自治体が毎年報告することです。
国・自治体が、どんなものを・どのくらいの金額で障害者就労施設から購入したのかを、年次報告書にまとめて公表。
たとえば
・県庁:印刷・事務用品 調達総額300万円
・市役所:清掃・除草業務 調達件数12件など、数字として一覧化されます。
これは“営業データ”でもあり、「どの部署がどんな仕事を外注しているか」を見える化する資料になります。
対象となる「障害者就労施設等」とは
法律上の対象は、以下のような施設です。
| 区分 |
対象となる事業 |
| 就労継続支援A型・B型 |
最も多い対象、継続的な業務委託が可能。 |
| 就労移行支援事業所 |
一部の役務提供も可(清掃・軽作業など)。 |
| 地域活動支援センター |
物品販売などで対象になる場合あり。 |
つまり、「B型事業所だけの法律」ではありませんが、継続的な“請負・受託”ができる体制がある事業所ほどチャンスが大きいのです。
仕組み③:発注のルートには「随意契約」が使える
通常、自治体の契約は「入札」が基本です。
しかし、障害者優先調達推進法に基づく取引では、入札を行わずに発注(随意契約)できる特例が認められています。
「障害者就労施設等からの調達を促進するため、随意契約を行うことができる」(会計法施行令第99条第1項第14号)
つまり・・・
「見積書1枚+実績紹介」で直接受注できるケースもあるのです。
この点が一般の企業取引との大きな違いです。
行政書士としての視点
調達契約に進むためには、契約書・仕様書・請負関係書類の整備が必須です。
行政書士として支援できるのは、以下のような部分です。
・契約書・見積書の法的整合性チェック
・仕様書や請負範囲の整理
・個人情報・守秘義務の条項整備
・役務提供におけるリスク分担の明確化
こうした“書類整備”ができていないと、せっかくの依頼が「契約手続きで止まってしまう」こともあります。
法律を「活かす」ためには、法的準備も大切です。
次回のブログはコチラ⇒<障害者優先調達推進法とは③>どうすれば発注先になれるのか?
2025年11月10日 00:29