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<行政書士が解説・就労型のB型事業所④>チームで支える

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行政書士の大場です。

就労型B型事業所の現場を見学させていただくと、いつも感じるのは「チームワーク」が大切だなと思います。

誰か一人が頑張るより、役割を分担して“チームで支える”ほうが、結果も安定する。
今回は、そんな「チームづくり」と「利用者育成」の考え方を、整理してみます。

ひとりで全部やろうとしない 

B型の支援員さんは、やることが本当に多いですよね。
作業指導、記録、請求、営業、面談…まるで何役もこなすスーパーマンです。

でも、就労型B型事業所では、「職員が全員で支える」体制づくりがうまくいくポイントだと感じています。

たとえば

役割 主な担当 イメージ
管理者 事業全体の方針、行政対応 “船の舵取り”
サービス管理責任者 個別支援計画の作成・進行管理 “地図を描く人”
支援員 作業・日常支援・記録 “現場のエンジン”
営業・広報担当 取引・販路拡大・発信 “外の世界とつなぐ人”

誰かが無理して全部を抱え込まない。
この“分担の仕組み”が、就労型B型事業所の安定を生み出します。

 作業指導ではなく仕事の伴走

就労型B型事業所では、「指導」よりも「伴走」がキーワード・・・
つまり、「教える」より「一緒に考える」支援です。

たとえば
・「なぜこの工程が難しいのか」を一緒に検証する
・「どうすればもっとやりやすいか」を利用者と考える
・成果が出たら「一緒に喜ぶ」

こうした関わり方をしている事業所は、利用者の定着率も高く、結果的に生産性も上がっていると感じます。

 得意を伸ばす配置の工夫

調べていて面白かったのは、工賃の高い事業所ほど「配置の工夫」をしていること。

作業を“人に合わせる”のではなく、“その人に合った作業を作る”。

たとえば
・手先が器用な人 → 細かい袋詰めや検品
・集中力がある人 → データ入力や印刷チェック
・人との会話が得意 → 店頭販売や接客

利用者が“得意なことを任されている”と感じるだけで、責任感とやる気がぐんと増します。

 見えるチームをつくる

チームがうまく回るコツは、「役割を見える化」すること

ホワイトボードや壁に
・今日の担当者
・作業工程
・次の目標
などを簡単に書いておくと、利用者も「自分の役割」を意識できるようになります。
“みんなで同じ方向を向いている”という感覚はチームそのものだと思います。


次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・就労型のB型事業所⑤>販路を広げる

2025年10月27日 00:11

<行政書士が解説・就労型のB型事業所③>「仕事をつくる発想」

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こんにちは、行政書士の大場です。
就労継続支援B型の資料を読んでいると、どの自治体でも必ず出てくるキーワードがあります。
それが「生産活動の充実」・・・
 
でも、いざ現場を見てみると、「仕事が少ない」「単価が安い」「季節で波がある」など、“安定して続けられる仕事”を見つけるのがいちばん難しいものです。
では、どうすれば「続けられる仕事」をつくれるのか?
今回は、就労型B型事業所の“仕事をつくる発想”についてまとめてみます。

「仕事を探す」より、「仕事をつくる」

B型事業所では、企業や地域から仕事を“もらう”ことが多いですが、最近の流れを見ると、「自分たちで仕事を生み出す」事業所が増えています。

たとえば
・商品を自分たちで企画・制作・販売する
・企業と共同で地域ブランド商品を開発する
・SNSやネット販売で独自の販路を開く

こうした動きが「就労型B型」を支える大きな柱になってきています。

国もこの流れを後押ししており、令和6年度報酬改定では「生産活動支援の強化」や「企業連携の促進」が評価項目に入りました。

 “働く人”を中心にした仕事づくり

「仕事をつくる」と聞くと難しく聞こえますが、考え方のひとつとして
利用者さんがどんな作業なら集中できるのか、どんな分野に興味があるのか・・・
たとえば「手先が器用」「人と話すのが得意」「整理整頓が好き」その得意分野から仕事を設計していきます。
仕事を探す前に、“この人たちなら何ができるか”を考えることです。
それが、結果的に安定した生産活動につながる場合もあります。

 仕事の3つのタイプを意識する

就労型B型で仕事を増やすとき、次の3タイプを意識しておくと整理しやすいです。

タイプ 内容 具体例
① 継続型 年間を通して安定的にある仕事 封入・印刷・清掃・農作業など
② 季節型 繁忙期に集中する仕事 贈答品・イベント・農産加工など
③ 創造型 自主商品・地域ブランドなど クッキー・雑貨・名刺・アート作品など

この3つをバランスよく組み合わせることで、「波のない収入」「利用者が飽きない活動」が実現できます。

 地域企業との協働がカギ

最近では、「企業連携型B型」という考え方があります。
地域の企業や農家、カフェや店舗などと協力し、B型事業所が「一部の工程」を担う形です。
たとえば
・梱包・検品・カット・袋詰め
・デザインやデータ入力
・納品や顧客対応の補助

こうした“分業型の仕事”は、利用者さんのレベルに合わせやすく、継続しやすいのが特長です。

 見える成果があるとモチベーションが上がる

調べていて印象的だったのは、利用者さんが「自分の仕事の結果を見られる」仕組みを持つ事業所ほど、工賃も安定しているということです。

たとえば
・完成した商品を自分でラッピングする
・店頭やイベントで販売に立ち会う
・SNSで“自分たちの商品”を紹介するなど

“自分のしごと”が“誰かの笑顔につながる”と実感できること、それが、就労型B型の最大のやりがいです。

次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・就労型のB型事業所④>チームで支える

2025年10月26日 23:07

<行政書士が解説・就労型のB型事業所②>工賃アップは目的ではなく仕組み

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こんにちは、行政書士の大場です。

B型事業所の話になると、必ずと言っていいほど出てくるキーワード、それが「工賃アップ」です。


でも最近、いろんな資料を読んでいるうちに気づきました。
「工賃を上げるぞ!」と気合を入れるよりも、“工賃が上がる仕組み”を作るほうがずっと現実的なんです。

 工賃は「結果」であって「目的」ではない

国(厚労省)の方針でも、「工賃向上」は“評価指標”であり、“目標”ではありません。

つまり、工賃を上げようと頑張ること自体が目的ではなく、働く仕組みや支援の仕方を見直した結果として工賃が上がるものだと思います。

たとえるなら
工賃は“花”のようなものです。
いくら花びらを引っ張っても咲かない。
水をやり、土を整え、日が当たるようにして初めて花が開く、支援の仕組みも同じですね。

 では、「仕組み」って何のこと?

調べていくと、工賃アップの“仕組み”には3つの要素があるとわかりました。

仕組みの柱 内容のイメージ
① 仕事(生産活動) 利用者が関われる作業の設計、商品や受注内容の見直し
② 体制(チームづくり) 支援員・利用者・外部連携の役割分担、動きやすさ
③ 販路(売る仕組み) 販売先の確保、営業・宣伝、リピート取引の仕組み

この3つのうち、どれかが弱いと全体がうまく回りません。
だからこそ、“工賃アップ”は「やる気」ではなく「設計図」です。

“就労型B型”の仕組み

就労型B型では、職員と利用者がチームのように動きます。

・支援員:品質や納期の管理、取引先対応
・利用者:作業・検品・梱包などの現場担当
・管理者:全体の調整と制度管理

外部協力者による販売・技術・営業支援です。誰かひとりが頑張るより、役割がはっきりしているチームほど工賃が安定して上がりやすい、これが就労型の特徴だと感じます。

成果を出している事業所の共通点

各地の成功事例を調べていると、こんな共通点がありました。

  1. “得意”を活かした作業設計
     → 作業を一律にせず、利用者ごとに工程を調整

  2. “見える数字”を共有
     → 月ごとに生産量・売上・工賃を職員も利用者も見える化

  3. “失敗を責めない文化”
     → 作業ミスも「改善のきっかけ」として扱う

  4. “営業・発信の担当者”を置く
     → 地域や企業に仕事をつなぐ窓口をつくる

どの取り組みも、「頑張れ!」より「仕組みで回す」、この考え方が共通していました。

 働く環境を整えることも仕組みの一部

印刷、菓子製造、農作業・・どんな仕事でも、「安心して働ける環境」がないと続きません。
照明が暗い、音がうるさい、机が高すぎる・・・こうした環境の小さなストレスが減るだけで、作業効率も気持ちも驚くほど変わるそうです。これも大切な視点だと感じます。

次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・就労型のB型事業所③>「仕事をつくる発想」
2025年10月26日 22:41

<行政書士が解説・就労型のB型事業所①>“働く力”を育てるB型事業所

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こんにちは、行政書士の大場です。

前回までは「居場所型B型」について、“通うこと”そのものを支援にする考え方を見てきました。

今回からは、その“もう一つの方向”「働く力」を育てる“就労型B型”のお話です。
 

“働く力”を支える場所

就労継続支援B型というと、「働く場所」「仕事をする施設」というイメージがあります。
でも、実は制度上は“就労訓練”と“生活支援”が一緒になっている、ちょっとユニークな支援の仕組みになっています。
つまり、B型は“働く”と“生きる”の中間地点です。

まだフルタイムで働くのは難しいけれど、少しずつ社会の中で自分の力を試していくそんな“リハビリ的なしごと”の場です。

「就労型B型」ってどんな事業所?

制度を調べていくと、国がB型事業所をおおまかに2つに分けて考えていることが分かります。
・「居場所機能を重視するB型」
・「生産活動・工賃向上を重視するB型」
後者が、いわゆる“就労型B型”です。
就労型では、「作業=訓練」として位置づけ、利用者が自分の得意を見つけたり、“できること”を増やしていくことを目標にしています。

 “働く”を通して得られる3つの力

国の資料では、B型の目的を

「働くことを通じて、社会生活の力をつける」としています。

これをもう少しやさしく言い換えると、“就労型B型”では次の3つの力を育てています。

育てる力 具体的には…
① 生活の力 朝起きて、決まった時間に通う習慣
② 人と関わる力 挨拶・相談・協力などのコミュニケーション
③ 働く力 作業・集中力・責任感・自信の積み重ね

この3つが揃うと、「次のステップ」(A型・一般就労など)へ進む力が自然に身につきます。

 “工賃を上げる”とは

就労型B型では、よく「工賃向上」という言葉が出てきます。
ただ、ここでいう“工賃アップ”は「頑張れ!」ではありません。
工賃を上げるためには、職員・利用者・地域企業がチームで動く仕組みづくりが大切です。

・商品やサービスの質を上げる
・受注先(取引先)を増やす
・作業の流れを見直して効率化する

こうした仕組みが整うと、結果的に「働く力」も「工賃」も上がっていきます。
この“経営と支援のバランス”が、就労型B型の醍醐味です。

 仕事をつくる力が未来を変える

最近の報酬改定では、「新しい生産活動を生み出す事業所」が高く評価されています。

たとえば
・生産活動の内製化(内製化により事業所独自の料金設定が可能)
・生産活動の専門性(例えば、印刷事業専門、リネン事業専門、製造業専門など>
・農作物の加工やネット販売
・地域企業とのコラボ商品づくり

こうした取り組みは、単なる作業ではなく、“地域とつながるしごと”でもあります。

就労型B型の強みは、「しごとを待つ」のではなく「しごとをつくる」そこに、これからの工賃アップの可能性があると感じます。

次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・就労型のB型事業所②>工賃アップは目的ではなく仕組み

2025年10月26日 22:12

<行政書士が解説・居場所型のB型事業所⑦>令和9年度改定(2027年度)を見据えて

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こんにちは、行政書士の大場です。

居場所型B型について調べていると、国(厚生労働省)が進めている次の報酬改定、つまり令和9年度(2027年度)の制度改定が、今後のB型事業所のあり方を大きく左右する節目になることが予想されます。

 1. 制度の方向は「機能の整理」へ

厚労省の検討会資料では、就労系の障害福祉サービス全体について、次のように示されています。

「生産活動を中心とする支援と、日中活動を中心とする支援を明確に整理する。」

つまり、「働く支援」と「生活を支える支援」をこれまでよりはっきり分けていく方向が検討されているのです。

この流れから見ると、現在B型の中にある「居場所型」「工賃向上型」が、将来的に別の制度や報酬体系に整理される可能性があると考えられます。

 2. 居場所型B型が“なくなる”のではなく“形を変える”

一部では「居場所型がなくなるのでは?」という声もあります。
しかし、資料を読む限り、そうではありません。

むしろ国は、
「就労が難しい人にも、日中の居場所や社会参加の場を保障する」という方針を明確に示しています。

つまり、“居場所型”という形が消えるのではなく、日中活動支援型サービス地域生活支援の新しい枠組みとして整理・再定義される可能性が高いのです。

3. 「どんな支援をしているのか」を言葉にする時代へ

制度が再編されるときに大切になるのは、「あなたの事業所はどんな支援をしているのか」を、きちんと説明できることです。

たとえば、

・働く力を伸ばす場なのか
・通うことで生活を安定させる場なのか
・地域との交流を重視しているのか

その特徴を明確にしておくと、制度が変わってもスムーズに移行できます。
行政に説明するときも、「通所継続」「生活改善」「社会参加」など、数値だけでなく“支援の目的”を言語化しておくことが大切です。

 4. 今からできる3つの準備

次の3つです

準備すること 内容
① 事業所の方向性を整理する 「就労型」か「居場所型」か、主軸を明確にしておく
② 記録・成果を見える化する 出席率、交流の回数、生活リズムなど“非数値の成果”を残す
③ 地域との関係を強める 自治体・企業との連携を日常化しておく

これらは、制度が変わっても事業所を守る“土台”になります。

 5. 制度は変わっても、支援の本質は変わらない

制度改定のたびに「変わる」という不安がつきまといますが、実際には、国が目指している方向は一貫しています。

「誰もが地域で自分らしく暮らせるように支援する」

この基本は、居場所型にも就労型にも共通です。
大切なのは、制度の枠ではなく、“利用者が安心して通える場をどう守るか”という視点です。

居場所型B型は、これからの地域福祉にとって欠かせない存在であり、形を変えてもその役割は続いていくと思います。

次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・就労型のB型事業所①>“働く力”を育てるB型事業所

2025年10月26日 21:41

<行政書士が解説・居場所型のB型事業所⑥>カフェ・農園・創作活動の可能性

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こんにちは、行政書士の大場です。

居場所型B型の支援について調べていると、全国の事例で共通して出てくるキーワードがあります。

それは「地域とのつながり」で、働くことが難しくても、地域の人と関わりながら活動できるそんな取り組みです。

今回は、いくつかの事例を通して見えてきた「地域とつながる居場所」の形をまとめてみます。

 1. カフェが“地域との接点”になっている

調べていて一番多かったのが、小さなカフェや喫茶コーナーを併設するB型事業所です。
利用者さんがコーヒーを淹れたり、クッキーを袋詰めしたり、地域の人がふらっと立ち寄ることで、自然に会話が生まれます。
お客さんとして地域の人が関わるだけでなく、「また来るね」「今日もありがとう」という言葉のやりとりが、利用者さんにとって“自分の役割を感じられる瞬間”になっているようでした。

 2. 農園や花壇づくりで“地域と一緒に育てる”

次に多く見られたのが、農作業や花壇づくりを通じた地域連携です。
B型事業所の畑で収穫した野菜を地域の直売所で販売したり、学校や老人ホームの花壇を一緒に手入れしたり。
 

これらの活動は収益目的ではなく、“人と関わること”“地域の役に立つこと”を目的にしています。
小さな交流の積み重ねが、「地域に開かれた居場所」をつくっていると感じます。

3. 創作活動が“つながりのきっかけ”になる

居場所型の事業所では、アートやハンドメイド作品などの創作活動を取り入れている例も多く見られました。
展示会を開いたり、地域のマルシェで販売したり、作品を通じて地域の人に見てもらうことで、「誰かに認められた」「自分の表現が届いた」という実感が生まれます。


こうした“見える交流”が、利用者さんの自信につながる、それが居場所型B型ならではの支援だと感じます。

 4. “地域とのゆるやかな関係”が居場所を守る

調べていて印象的だったのは、どの事業所も「地域と深く関わる」というより、“ゆるやかにつながる”工夫をしていることでした。
地域行事に少し顔を出す、地元の方に野菜を買ってもらう、お礼の手紙を届ける。
そんな小さなつながりが、地域の理解と信頼を育て、結果的に事業所の存在を支える力になっているようです。

 5. 居場所が地域の“福祉の入り口”になる

地域とつながることで、B型事業所は単なる支援の場を超え、“地域の福祉の入り口”のような役割を果たしていると感じます。
「働けない人」だけでなく、「家から出たい人」「人と話したい人」「ちょっと休みたい人」そうした多様な人達が支援を望んでいます。
非常に奥が深い世界だと感じました。

次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・居場所型のB型事業所⑦>令和9年度改定(2027年度)を見据えて
2025年10月26日 21:21

<行政書士が解説・居場所型のB型事業所⑤>現場の実践を調べてみて感じたこと

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こんにちは、行政書士の大場です。

これまで、「居場所型B型」という考え方を制度面から見てきました。

今回は、現場の取り組みや自治体の事例集などを調べる中で、「居場所型B型の実践」にはいくつかの共通点があることに気づきました。
ここでは、私が資料を通して感じたことをまとめてみます。
 

 1. “作業中心”ではなく“日々のリズム”を支えている

多くの居場所型B型では、「1日の流れ」を大切にしていました。
午前は軽い作業や掃除、午後はお茶を飲みながら話す時間
こうしたゆるやかな時間の構成が、利用者さんの生活リズムを整える支援になっています。

生産性を追うのではなく、“通うこと”そのものを支援の中心に置くそれが居場所型の大きな特徴だと感じます。

 2. “人と関わるきっかけ”をつくっている

事例集には、「会話のきっかけづくり」を工夫している例が多く載っていました。
たとえば

・朝の「ひとこと交流タイム」を設定している
・利用者同士が一緒にお茶を入れる時間を作っている
・帰り際に「今日できたこと」を一緒に振り返る

これらは一見、作業とは関係ないようですが、人との関わりを取り戻す“最初のステップとして大切にされているそうです。

 3. “地域との接点”を小さく、でも丁寧に

居場所型の事業所の中には、近隣の商店や地域ボランティアとゆるやかに関わる取り組みも多く見られます。

地域イベントに小さな出店をしたり、清掃活動を一緒に行ったり、大きな成果を目指すのではなく、「地域の中に自然に存在する場所」として関係を育てている印象を受けました。

 4. 支援員は“指導者”ではなく“伴走者”

資料を読む中で印象的だったのは、支援員の方々の姿勢です。

作業を教える人、ではなく、「今日はここまででいいよ」「ゆっくり休もうね」と声をかける伴走者のような支援です。
それによって、利用者さんが“ここにいていい”と感じられる空気が生まれているようでした。

 5. 共通しているのは「その人のペースを大切にすること」

どの事例にも共通していたのは、“できる・できない”ではなく、“その人のペースを尊重する”という考え方です。
焦らせない、比べない、無理をさせない。

そんな小さな積み重ねが、結果として通所継続や生活の安定につながっていると感じました。


次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・居場所型のB型事業所⑥>カフェ・農園・創作活動の可能性

2025年10月26日 21:03

<行政書士が解説・居場所型のB型事業所④>工賃が低くても意味がある

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こんにちは、行政書士の大場です。

就労継続支援B型のことを調べていると、よく出てくるキーワードのひとつが「工賃向上」です。
たしかに、利用者さんの頑張りを形にするうえで、工賃はとても大切です。

でも、最近は「工賃が低い=ダメな事業所」という誤解も少なくありません。
実際には、工賃の数字だけでは測れない“支援の価値”があります。

 「働く支援」だけではないB型の役割

B型事業所には、作業を通して工賃を得る「就労支援型」と、日中活動や社会参加を中心にした「居場所型」の両方があります。

どちらも制度上の「B型」ですが、目的が少し違います。

・就労支援型:働く力を伸ばす支援
・居場所型:生活リズムや人とのつながりを支える支援


居場所型の利用者さんの中には、長く家にこもっていた人や、体調に波がある人も多く、“まず通うこと”自体が大きなステップです。

 工賃が低くても「成果」はある

たとえば、月に5,000円の工賃しかない事業所でも、利用者の出席率が上がり、笑顔が増えているとしたら、それは立派な支援の成果です。
“働く”という形ではなくても、「人と関わる」「生活リズムを整える」「社会の一員として過ごす」こうした変化は、数値では測れない“もうひとつの成果”です。

 「工賃アップ=目的」ではなく「結果」

工賃向上はゴールではなく、支援の積み重ねの“結果”です。

たとえば

・通所が続くようになった
・少しずつ作業に関わる時間が増えた
・人とのやり取りが増えた
こうした日々の変化が積み重なって、結果として工賃アップにつながることもあります。
だから、居場所型の事業所が「まず通うこと」を大切にするのは、決して工賃を軽視しているわけではありません。
“その人のペースで働く力を取り戻す”ための支援です。

行政書類での伝え方の工夫

工賃が低い場合は、工賃向上計画書や自己評価の中で、次のように説明すると伝わりやすいです。

「本事業所は、日中活動・社会参加を重視し、通所継続を第一の支援目標としている。利用者の安定した生活基盤づくりを通じて、将来的な就労・工賃向上を目指す。」

このように書くことで、行政に対して「今は工賃よりも支援の基礎づくりをしている」という意図が伝わります。

次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・居場所型のB型事業所⑤>現場の実践を調べてみて感じたこと

2025年10月26日 20:36

<行政書士が解説・居場所型のB型事業所③>制度の中でどう位置づける

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こんにちは、行政書士の大場です。

就労継続支援B型というと、「働く支援」というイメージが強いですよね。
でも、実は制度の中には“働くこと”だけではなく、日中活動や社会参加の場としての役割も含まれているんです。
今回は、その「居場所型B型」が制度上どう整理されているのかを、やさしく見ていきます。

 B型の正式な定義は「働く場+生活を支える場」

国(厚生労働省)が示すB型の定義はこうです。

「生産活動その他の活動の機会の提供および就労に必要な知識・能力の向上のための支援を行う事業」

この“その他の活動”という部分がポイントです。
ここには、日中活動・社会参加・生活リズムの支援なども含まれています。

つまり、B型事業所は単に「働く場所」ではなく、“人が社会と関わりながら安心して過ごせる場所”でもあるんですね。

 「居場所型」はB型の中のひとつの形

令和6年度(2024年度)の報酬改定では、厚労省が次のように述べています。

「就労継続支援B型事業所には、工賃向上を重視する事業所と、地域生活支援・居場所機能を重視する事業所がある。」

つまり、“居場所型”も正式にB型の一形態として認められているということです。

 書類ではどう書けばいいの?

「じゃあ、運営規程や申請書には“居場所型”と書いていいの?」という疑問もあるかもしれません。
実は、“居場所型”という言葉は制度上の正式名称ではありません。

ですので、書類には次のように表現すると自然です。

「利用者の特性に応じた生産活動および日中活動の機会を提供し、社会参加と生活リズムの安定を支援する。」

この表現なら、行政にも伝わりやすく、「働く」と「通う」の両方を支援している姿勢が伝わります。

 工賃向上計画書に書くときのコツ

居場所型のB型では、工賃金額よりも「通所・参加の継続」を重視します。
ですから、目標設定も次のように書くと良いでしょう。

目標の方向性 例文
通所機会の確保 「年間を通して出席率を70%以上に維持する」
生活リズムの安定 「午前中から活動に参加できる利用者を増やす」
社会参加の促進 「地域イベントへの参加機会を年間3回設ける」

“金額の数字”ではなく、“変化の方向性”を見える形にするのがよいでしょう。

 制度のキーワードは「多様性」

B型の制度を見ていくと、国が大切にしているのは「多様なB型のあり方」です。
働ける人もいれば、まだ準備が必要な人もいる。


それぞれに合った支援を続けることが、B型の本来の目的、居場所型のB型は、まさにその「多様性」を体現する形だと言えます。


次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・居場所型のB型事業所④>工賃が低くても意味がある?

2025年10月26日 20:13

<行政書士が解説・居場所型のB型事業所②>作業よりも“通うこと”が支援になる

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こんにちは行政書士の大場です。
障害福祉<就労継続支援B型>の制度を調べていて、「居場所型」という言葉に出会いました。
最初は、「え?B型なのに“働かない”の?」と少し驚きました。


けれど調べていくうちに、この“居場所型”という考え方が、実は国の方針の中でもしっかり位置づけられていることがわかってきました。

 B型は“働く場”だけではなかった

私の中では、B型=「働くことを通じて社会参加を目指す支援」というイメージがありました。
しかし、厚労省の報酬改定資料を読み込むと、次のような文言がありました。

「就労継続支援B型事業は、多様な利用者のニーズに応じ、日中活動の場としての機能も重要である。」


つまり、働くことを目的としない人にも、日中過ごせる場を提供するB型が制度的に認められているのです。
“作業をすること”よりも、“通うこと”自体が支援になる。それが「居場所型B型」という考え方でした。

“通うこと”が支援になる理由

制度の文書を読みながら、私はふと思いました。
たしかに、外に出ること自体が難しい人もいる、精神障がいや長期の引きこもり経験をもつ方、高齢で体力が落ちている方そうした人にとって、“誰かと過ごせる時間”こそが、社会との接点なのかもしれません。
“働く”以前に、“人と関わる練習”が必要な人もいる。
そんな利用者さんにとって、B型事業所は「仕事の場」である前に「安心できる場」であるのかなと制度を通じてそのことを実感しました。

 制度が示す「二つのB型」

厚労省は令和6年度の報酬改定で、B型を大きく二つの方向性で整理しています。
1,工賃向上を目指す“就労重視型”
2,社会参加・日中活動を重視する“居場所型”
どちらが正しいという話ではなく、利用者の特性に合わせて選べるようにするつまり、「働く」も「通う」も支援の形として同等に認める形です。

 知れば知るほど奥が深い制度

こうして制度を調べていくと、B型事業所は単に「働く場所」ではなく、地域社会の中で“人の居場所をつくる仕組み”でもあることに気づきます。作業に参加できなくても、通うこと自体が支援になる。
その考え方が、これからの福祉の多様性を象徴しているように感じます。

次回のブログはコチラ⇒<行政書士が解説・居場所型のB型事業所③>制度の中でどう位置づける?

2025年10月26日 19:35