<新規開所の流れ>就労継続支援B型事業所(法人設立編)⑧>資本金はいくら必要か?
こんにちは、行政書士の大場です。
B型事業所開所の相談を受けると、必ず聞かれる質問があります。
「資本金(資金)は、いくら用意すればいいですか?」
結論から言うと・・・
資本金=最低でも100万円、理想は300〜500万円
「1円から株式会社は作れます」と言われますが、それは法律上可能なだけであり、B型事業の現実には全く合いません。
仙台市のB型事業所を開所するには、資本金(=開所資金)は次の3つの理由で非常に重要です。
1,物件契約(家賃・保証金)
2,開所までの運転資金
3,生産活動の初期投資(必要な場合)
さらに
資本金の額は、実は開所後の「工賃計算の構造」にも影響します。
今回はこれを整理していきます。
資本金とは?
→ かんたんに言うと「会社が最初に持っているお金」
もっと正確に言うと…
会社を作るときに、会社の“お財布”に入れるお金
このお金を使って、会社は最初の運営を始めます。
これが資本金です。
資本金は“あなたの個人のお金”ではなく、会社のお金になる
会社をつくるとき、
たとえば50万円を資本金として入れたら、
あなたの個人口座のお金ではなく会社のお金になります。
あなたが勝手に使ってはいけません。
会社の運営や設備費、家賃、仕入れ、人件費など、事業のためだけに使えるお金です。
資本金の役割は3つ
資本金には3つの大きな役割があります。
① 会社の“最初の運転資金”
B型事業所の場合
・開所までの家賃
・スタッフ給与
・備品代
・申請準備
これらは工賃も給付費も入ってこない時期に発生します。
この期間を支えるのが資本金=最初の資金です。
② 会社の“信用力”を示すお金
資本金が多いほど、周囲からの信用が上がります。
・不動産会社(物件契約の審査)
・銀行(法人口座開設)
・取引先(印刷・資材の掛け取引)
これらは資本金を見ています。
③ 設備投資・生産活動の初期費用になる
B型事業所では、生産活動が工賃の基盤です。
・印刷機
・パソコン
・厨房設備
・作業机・棚
・初期材料費
こうした初期投資はすべて資本金から出します。
資本金はいくら必要?
【最低ライン】100万円
・法人設立(約20万円)
・賃貸の保証金(家賃1〜2ヶ月)
・火災保険
・備品(机・PC最低限)
などをギリギリまかなえるレベルです。
実務では「開所はできるが、かなり苦しい」パターン
【推奨ライン】300万円
もっとも現実的で安全なライン。
・家賃2〜3ヶ月分の保証金
・事務所備品
・通信・ネット環境
・書類印刷費(40枚分の印刷・郵送等)
・開所までの運営費
開所準備は売上がゼロなので、最低3ヶ月の運営資金が必要です。
【理想ライン】500万円
以下のような“初期投資型の生産活動”をするなら必須です。
・印刷機事業
・菓子製造設備
・農作業設備
・物販(ネットショップ開業含む)
特に「印刷」や「食品製造」は設備費がかかるため、500万円前後がもっとも安定します。
資本金が“工賃計算”に影響する理由
「資本金と工賃って関係あるの?」と思う方が多いのですが、実は関係します。
理由①:生産活動の“質”と“幅”が資本金で決まる
工賃は、生産活動の収入から生まれます。
つまり…
・高単価の仕事がある
・生産量が多い
・高付加価値の商品が作れる
= 工賃が上がる
これらは全部、最初の設備投資や材料費が必要です。
資本金が多い場合
・印刷機が買える
・菓子製造設備が整う
・在庫を持てる
・商品開発ができる
→ 高単価の仕事ができる → 工賃が上がる
資本金が少ない場合
・内職しかできない
・材料が買えない
・設備投資ができない
・仕事が単価の低いものに偏る
→ 工賃が上がらない
理由②:運転資金がないと工賃が“先に払えない”
B型事業所の工賃は「月末払い」が基本
でも国からの給付費の入金はサービス提供の約2か月後
つまり、
お金が入らない時期にも工賃は発生する。
資本金=運転資金が少ないと…
・工賃を払えない
・生産活動が止まる
・利用者の作業時間が減る
・結果として工賃が下がる
という悪循環になります。
資本金が多い場合
→ 給付費が入るまでの2〜3か月も工賃を安定して支払える
→ 生産活動も止まらない
→ 工賃が上がりやすい
資本金が少ない場合
→ 工賃が払えず、支援時間や作業量が減る
→ 工賃は伸びない
理由③:設備・材料・人件費の余裕が“工賃アップ”を支える
B型事業所は「工賃向上計画」の立案が義務です。
工賃アップには
・新しい仕事を取る
・生産能力を上げる
・人員増で支援時間を増やす
・材料を安定確保する
こうした“先行投資”が欠かせません。
先行投資=資本金が必要ということです。
資本金が“融資・物件契約”にも直結する理由
物件契約をすると
・家主
・管理会社
・不動産業者
からほぼ聞かれる質問があります。
「資本金はどれくらいありますか?」「運営できる資金はありますか?」B型事業所は一般のオフィスと違い、障害福祉サービスという特殊業態のため、家主は慎重になります。
資本金が少ない法人は、契約を拒否されるケースもあります。
また金融機関の融資審査でも資本金は信用力を表す指標になります。
資本金の「最適額」を決める考え方
✔ ① 生産活動の種類
✔ ② 物件の広さ・立地
✔ ③ スタッフ採用の時期
✔ ④ 開所後の運転資金
4つの要素を総合するとあなたの事業所に必要な「最適な資本金」が決まります。
次回のブログはコチラ⇒<新規開所の流れ>就労継続支援B型事業所(法人設立編)⑨>法人設立に必要な書類一覧<仙台市版>
2025年11月21日 01:20