<就労移行支援サービス費の考え方③>定着率の計算方法と実績報告
こんにちは、行政書士の大場です。
就労移行支援の報酬は、「就職者数」ではなく「定着率」で評価されます。
しかし実際に計算しようとすると、「6か月以上定着した利用者って、どこまで含めるの?」「分母は“定員”なの?“利用者数”なの?」
と迷うことが多い部分です。
今回は、厚労省の報酬告示をもとに、定着率の計算方法と実績報告の基本を整理します。
定着率とは
厚生労働省の定義によると、
「就労移行支援を利用して一般就労に移行し、就職後6か月以上継続して働いている者の割合」
をいいます。つまり「就職して終わり」ではなく、“6か月以上続いているかどうか”が評価の基準です。
定着率の計算式
定着率は、以下の式で求めます。
定着率(%)=(就職後6か月以上継続している人数÷利用定員)×100定着率(%)たとえば
| 利用定員 | 6か月以上定着した人数 | 定着率 | 適用区分 |
|---|---|---|---|
| 20人 | 10人 | 50% | 1,210単位(定員20人以下) |
| 20人 | 8人 | 40% | 1,020単位 |
| 20人 | 2人 | 10% | 569単位 |
分母と分子の考え方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分母 | 利用定員(就労移行支援事業所として指定を受けた定員) |
| 分子 | 就職後6か月以上継続して働いている利用者数 |
※「利用者数」や「通所人数」ではなく、定員を基準に計算する点が重要です。
対象となる「定着者」の範囲
実績報告の提出タイミング
実績報告は、毎年度の「障害福祉サービス等報告書」の中で提出します。
| 対象期間 | 提出内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| 前年度および前々年度の定着者数 | 定着率の算出に必要な実績 | 都道府県・政令市(指定権者) |
自治体はこの報告内容をもとに、翌年度(4月以降)の基本報酬区分(単価)を自動的に判定
自治体ごとの運用
各都道府県・政令市が実際の事務として実績を確認する際には、以下のような書式・方法が使われます。
【例:宮城県の運用】
開設1年目・2年目の扱い
| 年度 | 実績の扱い | 算定区分 |
|---|---|---|
| 開設1年目 | 実績なし | 仮区分(定着率3〜4割未満)879/743単位 |
| 開設2年目 | 前年度分のみ | 1年度分の実績で暫定判定 |
| 開設3年目以降 | 前年度+前々年度 | 2年平均で正式算定(自動更新) |
このように、実績がまだ少ない新規事業所については、「揃っている範囲の実績」で算定する仕組みになっています。
次回のブログはコチラ⇒<就労移行支援サービス費の考え方④>定着率と報酬の関係