<就労移行支援サービス費の考え方④>定着率と報酬の関係
こんにちは、行政書士の大場です。
就労移行支援の報酬は、「就職率」ではなく「定着率」で評価されます。
つまり、“働き続けられる支援”をどれだけ行えているかが、そのまま事業所の報酬に反映される仕組みです。
今回は、実際の数値を使って、定着率と報酬の関係を具体的に見ていきます。
基本報酬は“定着率”で7段階に区分される
令和6年度報酬改定では、就労移行支援の基本報酬が「利用定員」と「定着率」に応じて細かく設定されています。
【定員20人以下の事業所】
| 定着率 | 基本報酬単位(1日あたり) |
|---|---|
| 5割以上 | 1,210単位 |
| 4〜5割未満 | 1,020単位 |
| 3〜4割未満 | 879単位 |
| 2〜3割未満 | 719単位 |
| 1〜2割未満 | 569単位 |
| 0〜1割未満 | 519単位 |
| 0割 | 479単位 |
【定員21〜40人以下の事業所】
| 定着率 | 基本報酬単位(1日あたり) |
|---|---|
| 5割以上 | 1,055単位 |
| 4〜5割未満 | 881単位 |
| 3〜4割未満 | 743単位 |
| 2〜3割未満 | 649単位 |
| 1〜2割未満 | 524単位 |
| 0〜1割未満 | 466単位 |
| 0割 | 432単位 |
どれくらいの差が出るの?
単位数だけでは実感がわきにくいので、仮に1単位=10円として試算してみます。
<試算の前提条件>
・1単位=10円
・定員20人以下(1日1人あたりの単価)
・20日稼働/月
・1人あたりの金額を算出(=利用者1名分)
<計算式>
・月間報酬(1人あたり)=基本報酬単位×10円×20日・年間報酬(1人あたり)=月間報酬×12か月
<具体計算>
● 定着率5割以上(1,210単位)
12,100円×20日=242,000円(月間報酬)/月242,000円×12か月=2,904,000円(年間報酬)
➡ 表記:約24.2万円/月 約290万円/年
● 定着率3〜4割未満(879単位)
8,790円×20日=175,800円(月間報酬)/月175,800円×12か月=2,109,600円(年間報酬)
➡ 表記:約17.6万円/月 約211万円/年
● 定着率1〜2割未満(569単位)
5,690円×20日=113,800円(月間報酬)/月113,800円×12か月=1,365,600円(年間報酬)
5,690円×20日=113,800円(月間報酬)/月113,800円×12か月=1,365,600円(年間報酬)
➡ 表記:約11.3万円/月 約136万円/年
まとめ表(計算式に基づく)
| 定着率 | 単位 | 1日単価(10円換算) | 月間報酬(20日) | 年間報酬(12か月) |
|---|---|---|---|---|
| 5割以上 | 1,210 | 12,100円 | 242,000円 | 2,904,000円 |
| 3〜4割未満 | 879 | 8,790円 | 175,800円 | 2,109,600円 |
| 1〜2割未満 | 569 | 5,690円 | 113,800円 | 1,365,600円 |
<差額のイメージ>
→ 「5割以上」と「1〜2割未満」では、年間約150万円の差になります。
<ポイント>
この計算は「利用者1人あたり」の報酬です。
事業所全体の収入を試算するには、これに「平均利用者数」を掛ければOKです。
事業所全体の月間報酬=(基本報酬単位×10円×稼働日数)×平均利用者数
事業所全体の収入を試算するには、これに「平均利用者数」を掛ければOKです。
事業所全体の月間報酬=(基本報酬単位×10円×稼働日数)×平均利用者数
“報酬を上げる”ことは“支援の質を上げる”こと
報酬改定の背景には、「定着支援に力を入れる事業所を高く評価する」という厚労省の方針があります。
単位の差は“ペナルティ”ではなく、支援体制を整えた結果を評価として可視化する仕組みです。
つまり
・定着率を上げる=支援体制が整っている
・報酬が上がる=安定した事業運営ができる
という 「支援の質」と「経営安定」の両立構造 なのです。
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2025年11月10日 22:49