こんにち、行政書士の大場です。
B型事業所の現場では、「今の作業が減ってきた」「新しい仕事を取り入れたい」という声をよく耳にします。
最近では、印刷・デザイン・農作業・カフェ運営など、多様な“生産活動”を取り入れる事業所が増えています。
ただ、新しい活動を始めるには、「やってみたい」だけでは動かせない制度上のルールがあります。
今回は、行政書士の立場から「生産活動を始めるときに必要な手続き」と「導入を成功させるポイント」をお話しします。
1.「生産活動の追加」は、立派な“変更手続き”
B型事業所では、新しい仕事を始めるときに「生産工程の追加届」が必要になります。
「印刷を始めたい」「委託作業から自社製品を作りたい」といった場合も同じです。
・どんな内容の作業を行うのか
・どんな工程があるのか
・利用者さんが関わる部分はどこか
こうした情報を整理して、運営規程と生産活動の届出書を作成します。
2.作業の内容によっては「都市計画法」「消防法」にも注意
新しい生産活動を導入するとき、意外と見落とされがちなのが、建物や設備に関する法律です。
たとえば、
・印刷機を導入する場合:騒音・電力・用途地域の確認(都市計画法)
・加工・調理・飲食を行う場合:火気使用設備の確認(消防法)、飲食店営業許可、菓子製造許可(保健所)
・農業関連の場合:農地転用や建物の用途変更(農地法・建築基準法)
行政書士は、これらの法律の関係を整理して「やりたいことが、今の建物でできるのか」「別の許可や届出が必要か」を事前にチェックします。これを早めに確認しておくことで、開設後に“やっぱり申請が必要だった”という手戻りを防げます。
3.「できる作業」より「続けられる仕事」を選ぶ
新しい生産活動を導入するとき、最初に考えたいのは「続けられるかどうか」です。
短期間だけ受けられる下請け作業よりも、自分たちで作って、販売・納品できる仕事が理想的です。
印刷やデザイン、農産品の加工などは、地域とのつながりを作りやすく、継続しやすい分野です。
行政書士としては
「制度に合うか」だけでなく、「経営として成り立つか」という視点で、計画の段階から一緒に考えていきます。
4.営業・販売を始めるときの注意点
生産活動を始めると、自然に「営業」「販売」という要素も出てきます。
このときに必要になるのが、契約書や取引ルールの整備です。
たとえば
・企業との業務委託契約書の作成
・利用者さんが関わる販売に関する説明文書の整備
・個人情報や著作権に関する注意事項の確認
こうした部分をきちんと整えておくことで、トラブルや誤解を防ぎながら、安心して新しい事業を展開できます。
5.「新しい活動」を制度にきちんと載せることが大事
生産活動を導入するとき、“実際にはもう始めていたけれど届出がまだ”というケースも少なくありません。
しかし、制度上は「開始前の届出」が原則です。
行政書士は、開始時期や工程内容を確認しながら、
「いつ」「どの書類を」「どの機関へ」出すかを整理してサポートします。
この部分をしっかり整えておくと、監査や実地指導のときも安心です。
6.生産活動を導入すると“法人の顔”が変わる
新しい仕事を始めると、事業所の印象や地域での立ち位置も変わります。
たとえば
・印刷事業を始めたB型事業所が、地域企業から名刺印刷を受ける
・農作業を取り入れたB型事業所が、地元の直売所で販売する
・デザイン制作を行うB型事業所が、他事業所のパンフレットを手がける
こうした例が増えると、「地域の仕事を担う存在」として見てもらえるようになります。
行政書士は、制度の枠を守りながら、地域とつながる“仕組みづくり”を支援しています。
次回のブログはコチラ⇒<B型事業所サポートで行政書士ができること④>B型×雇用(利用者の転換雇用・社労士連携)
2025年10月27日 18:35