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お知らせ

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑱>工賃設定<~行政書士が解説~> 

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こんにちは、行政書士の大場です。

「工賃をいくらに設定するか?」これは、B型事業所の経営で必ずぶつかる壁です。
「ほかの事業所が◯◯円だから同じでいい」、「売上が少ないから仕方ない」そんな“なんとなくの工賃設定”になっていませんか?

今回は、どうやって工賃金額を決めていくのかを、3つの考え方に分けて整理していきます。

① 工賃設定の基本の考え方

工賃とは「活動の成果をどのように分配するか」を決める仕組みです。
つまり、経営と支援の両面から“納得できるルール”をつくることが大切です。

設定の際は、次の3点を意識します。

視点 内容
公平性 作業内容・時間・能力に見合っているか
透明性 算出根拠を説明できるか
継続性 法人として無理のない金額か

< 行政書士の視点>
工賃の金額よりも、「なぜこの金額なのか?」を説明できることが重要です。
行政もそこをチェックしています。

② 工賃設定の3つのパターン

B型事業所では、工賃の決め方に大きく3つの方式があります。

方式 内容 特徴・注意点
① 時給制 勤務時間に応じて支給(例:時給150円) 般就労に近く、分かりやすい。作業量に差が出にくい。
② 出来高制 作業成果に応じて支給(例:完成1個=20円) モチベーションが上がりやすいが、作業内容によって不公平が出やすい。
③ 定額+成果連動型 基本額+出来高(例:月5,000円+成果分) 安定性とやる気を両立できる。管理は少し複雑。

 ③ 実際の計算例

たとえば、月の生産活動収入が 300,000円 の場合

項目 金額
総生産収入 300,000円
材料費・経費 100,000円
残り(工賃分配原資) 200,000円
利用者数 10人
一人当たり平均工賃 約20,000円(月額)

ここで重要なのは、「どう分配するか」のルールを明確にしておくことです。

たとえば
・作業時間に応じて分配
・責任・難易度によって係数を設定
・成果に応じてポイント制で分配


※「責任・難易度によって係数を設定」というのは、同じ時間・同じ作業量でも、“仕事の重さ”を考慮して工賃を配分する仕組みのことです。
※「成果に応じてポイント制で分配」というのは、利用者一人ひとりの“作業成果”を見える化して、ポイントとして集計し、その合計ポイントに応じて工賃を分配する仕組みです。

 ④ 不公平感を防ぐためのポイント

「同じ時間なのに金額が違う」「あの人ばかり多い」
工賃をめぐるトラブルの多くは、“説明不足”から生まれます。

よくあるトラブル 対策
作業内容による差が不明確 作業ごとの単価表を作成する
欠席時の扱いが曖昧 欠席・遅刻時の減額ルールを明文化
成果の評価が主観的 指導員2名でのダブルチェック体制
工賃計算の根拠が不明 計算表を毎月ファイルに保管

< 行政書士の視点>
工賃は“トラブルの種”にも“信頼の証”にもなります。
明文化しておくことが、法人・利用者・職員すべてを守る仕組みです。

 ⑤ 「工賃規程」を作るメリット

法人ごとに「工賃の算出・支払い・説明方法」をまとめた工賃規程を作っておくと、運営が格段にスムーズになります。

 主な記載項目
・工賃の目的
・算定基準(時間・出来高など)
・欠席・遅刻時の取り扱い
・支払い日と方法
・工賃見直しの時期(年1回など)


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2025年11月06日 02:00

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑰>工賃の基本構造<~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。

就労継続支援B型事業所の新規開設の相談を受けていると、よくこんな質問を受けます。
「給付費の中から工賃を払うんですよね?」実は、ここが最も多い誤解のポイントです。

給付費と工賃は、どちらも「お金」に見えますが、流れも性質もまったく別です。
この違いを正しく理解することが、安定運営の第一歩です。

 ① 「給付費」と「工賃」は別の財布

まず、整理しておきましょう。

区分 内容 原資 支払い先
給付費 障害福祉サービスの対価 国・県・市町村 法人(事業所)
工賃 生産活動の成果の分配 法人の事業収入 利用者本人

つまり、
給付費は“法人が受け取るお金”、工賃は“利用者に支払うお金”です。

<行政書士の視点>
工賃は「給付費の一部」ではありません。
むしろ、“給付費をどう使って生産活動を支えるか”が経営のポイントです。

 ② お金の流れを図で見る


 
【行政】───▶(給付費)──▶【法人】──▶(工賃)──▶【利用者】                            
                 ↑↑
          (材料費・人件費・家賃など経費)
・行政は、サービス提供の対価として法人に「給付費」を支払う
・法人は、その給付費を運営資金として使いながら、生産活動で得た売上(=事業収入)から利用者へ「工賃」を支払う

<行政書士の視点>
“給付費”は運営の燃料、“工賃”は成果の証です。
両方を混同しないことが、安定経営の基本です。

 ③ 工賃の源泉は「生産活動収入」

工賃を支払うための原資は、生産活動で得た売上です。

たとえば
・印刷受託、農作物販売、内職委託、清掃請負など
・その売上から材料費・経費を引き、残りを利用者に分配
つまり、工賃は「活動の結果」として生まれる“もう一つの収入の柱”です。

< 行政書士の視点>
給付費だけでは「支援の継続」はできても、「工賃の向上」はできません。
だからこそ、生産活動の設計=工賃の設計なんです。

 ④ 「給付費で払う工賃」はNG?

制度上、給付費を直接「工賃」として利用者に支払うことはできません。
給付費は「サービス提供費」であり、職員人件費や事務費、運営費に充てるためのものです。
一方の工賃は「事業活動の成果分配」なので、あくまで売上(事業収入)から支払うという区分が必要です。

<行政書士の視点>
給付費と工賃を混ぜてしまうと、会計上も制度上も説明がつきません。
仕訳の段階で分けておくことが、トラブル防止の基本です。

 ⑤ 具体的な数字で見る「二本柱の関係」

たとえば、1か月の収支が次のようなイメージだったとします。

区分 内容 金額(例)
給付費収入 行政からの入金 2,000,000円
生産活動収入 印刷・内職など 300,000円
合計収入   2,300,000円
経費(人件費・材料費など)   2,100,000円
利用者工賃(分配)   200,000円

このように、
給付費と生産活動収入の両輪で運営が成り立っています。

<行政書士の視点>
工賃アップを考えるなら、「生産活動の収入をどう増やすか」がカギです。
ここにマーケティングや営業の視点を入れることが大切です。

⑥ お金の仕組みを理解することが信頼につながる

実地指導では、「工賃をどのように算定していますか?」「収支の中で工賃の割合はどのくらいですか?」と聞かれます。
このとき、「給付費と混同していないか」がチェックされます。
 

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2025年11月06日 01:38

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑯>なぜ「工賃設定」が重要なのか?<~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。

就労継続支援B型事業所の相談を受けていると、よくこんな言葉を耳にします。
「工賃って、市が決めるんじゃないの?」「とりあえず前の事業所と同じ金額でやっています」

実は、ここに大きな誤解があります。


工賃は行政が決めるものではなく、法人が自ら設定するものです。
つまり「経営判断」と「支援方針」が交わる部分です。

 ① 工賃=支援と経営の“接点”

B型事業所の運営は、給付費だけでは成り立ちません。
もう一つの柱が、生産活動による収入です。

この「活動の成果」を利用者へ還元するのが工賃です。

つまり
支援の成果が「数字」で表れるのが工賃です。

だからこそ、工賃の設定は「支援」と「経営」の両面から考える必要があります。

 ② 「工賃=余ったお金」ではない

誤解の多い考え方が、
「材料費・人件費を引いた残りを工賃にする」というやり方です。

たしかにそれも一つの形ですが、それだけでは“支援の意図”が反映されません。

本来、工賃とは

・支援目標に基づいて

・作業内容・成果・成長度に応じて

・利用者ごとに説明できる形で設定されるべきものです。

< 行政書士の視点>
工賃は「余り」ではなく「設計」です。
あらかじめ方針を立てておくことで、“納得のある数字”に変わります。

 ③ 国の方針「工賃向上計画」との関係

厚生労働省は、全国のB型事業所に向けて「工賃向上計画」の策定を求めています。

つまり、工賃は“上げなければいけない”お金ではなく、“上げていく努力が見えるお金”なのです。

この考え方は、単なる目標金額ではなく、

・商品やサービスの質を高める

・企業・地域との連携を増やす

・支援体制を見直す
といった経営改善の指標としての意味もあります。

< 行政書士の視点>
工賃の金額そのものよりも、「どうやってその数字にたどり着いたか」が重要です。

④ 工賃は“働く実感”をつくるもの

B型事業所の目的は、単に「作業の機会を提供すること」ではありません。

利用者が
「自分も社会の一員として働いている」と実感できるように支援すること。

その“実感”を具体的に感じられるのが、月末に渡される工賃です。

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2025年11月06日 01:21

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑮>生産活動を“ブランド”にする <~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。
生産活動は、単なる「仕事」ではありません。
利用者さんが誇りを持ち、地域の人に覚えてもらえるような“顔”のある活動こそ、これからの就労継続支援B型事業所に求められる姿です。

今回は、「生産活動をどう“ブランド”として育てていくか」という視点から、経営と発信のポイントを整理します。

 “ブランド”とは「信頼の積み重ね」

ブランドというと、ロゴやデザインを思い浮かべる方が多いですが、本質はそこではありません。
ブランド=信頼の記録です。

地域のお客様が「またお願いしたい」と思う、企業が「一緒に取り組みたい」と感じる、その積み重ねこそが、B型事業所のブランドになります。

“ブランド化”の第一歩は「統一感」

ブランドは「見た目」ではなく、「一貫性」から生まれます。

項目 整えるポイント
名前・ロゴ 活動の理念を伝えるシンプルなもの
商品・サービス 誰が見ても「B型らしさ」が伝わる内容
発信 SNS・チラシ・HPで表現をそろえる
契約・帳簿 外部に見せても恥ずかしくない整備

たとえば、印刷・菓子・農産物など分野は違っても、「この事業所の仕事は丁寧だね」と感じてもらえれば、それがブランドです。

ストーリーが価値を生む

ブランドの力は、“何を作ったか”より、“どんな思いで作ったか”に宿ります。

・印刷なら:地域企業の名刺を、利用者さんが一枚ずつ丁寧に仕上げる
・菓子なら:地元の材料で、安心・安全なおやつを届ける
・農業なら:地域の農家と協力して“福祉農園”として生産する
こうした「背景にある物語」が、地域の共感を呼びます。

 ブランドを支える3つの仕組み

視点 内容 行政書士が関わる部分
① 信頼の仕組み 契約・会計・法務整備 契約書、体制届、用途変更、食品許可など
② 発信の仕組み HP・パンフ・SNS コンセプト文・事業紹介
③ 継続の仕組み 職員体制・加算・計画書 処遇改善・工賃向上計画・運営規程の改定

ブランドは“見せ方”より“整え方”。制度と現場を整えることが、ブランディングの土台になります。

「地域ブランド福祉」

生産活動がブランドとして根づくと、地域の中で“なくてはならない存在”になります。

たとえば

・企業が「CSRパートナー」として協働する
・学校が「教育連携」で関わる
・行政が「地域福祉計画」の中で位置づける
 これが「地域ブランド福祉」です。


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2025年11月03日 16:49

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑭>生産活動収入の会計と書類整備<~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。

生産活動収入は「仕事の収入」であり、同時に“帳簿に残すべき事業収益”でもあります。

障害福祉事業であっても、売上が発生する以上は「どこから、いくら入り、どう使ったか」を明確に示す必要があります。

今回は、実地指導や監査でもよく確認される「会計と書類整備」のポイントを見ていきます。

 なぜ“書類整備”が重要なのか

生産活動は、福祉サービスと異なり“商取引”の側面を持ちます。
つまり
「仕事としての証拠」を残しておくことが、経営の信頼性につながります。

 

 実地指導で見られる主な項目

分野 チェックされる内容
売上管理 売上帳、納品書、請求書、領収書の整備
経費管理 材料費・仕入・光熱費などの帳簿記録
工賃管理 工賃台帳、支払い証憑、本人署名
契約関係 取引契約書、覚書、見積書、取引履歴
リスク管理 在庫管理、金銭管理、事故・トラブル記録

 会計の基本構造

生産活動収入は、「収益事業」ではなくても、一般会計とは別に管理することが望ましいとされています。

   [生産活動収入]  
├ 売上収入(取引先・顧客から)  
├ 経費(原材料・備品・燃料など)  
└ 工賃支払い(利用者へ)

この3つの流れが“数字で一致”していることが大切です。

<行政書士の視点>
実地指導では「帳簿」と「実態」が一致しているかを確認します。
記録と現場がズレていると、“利益が利用者に正しく還元されていない”と判断されることがあります。

 最低限そろえるべき帳簿と書類

区分 書類名 内容
売上 売上帳・納品書・請求書 取引金額・相手先・入金日を記録
経費 支出帳・領収書・見積書 材料費・光熱費・外注費など
工賃 工賃台帳・支払い明細書 支給額・対象者・支払い日
契約 取引契約書・覚書 販売・委託・業務受託の条件
管理 在庫表・月次報告書 商品残数・活動成果の記録

「請求書」「領収書」「工賃台帳」の3点セットを常にリンクさせておくことで、数字の裏づけが明確になります。

 書類整備のコツ

・「活動日誌」「作業記録」「売上帳」を同じ月単位でまとめる
・領収書や納品書には取引先名・日付・内容を必ず記入
・工賃台帳には支払日・金額・本人確認印を残す
・月次で集計し、年度末に工賃総額一覧を作成
<行政書士の視点>
会計ソフトよりも、まず「紙で残すこと」が第一歩です。手書きでも、整っていれば立派な“証拠資料”です。
 

次回のブログはコチラ⇒<就労継続支援B型事業所(お金に関すること)⑮>生産活動を“ブランド”にする <~行政書士が解説~>

2025年11月03日 16:29

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑬>生産活動と工賃の関係<~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。

前回は、生産活動収入を“どうつくるか”という導入のステップをお話ししました。
前回のブログはコチラ⇒<就労継続支援B型事業所(お金に関すること)⑫>生産活動収入のつくり方<~行政書士が解説~>

今回はその次のテーマ・・・「生産活動で得たお金(売上)は、どのように工賃として利用者に還元されるのか」を整理していきます。

 生産活動収入の構造

生産活動収入とは、事業所が“仕事”を通じて得た売上です。
ただし、そのまま工賃になるわけではありません。

実際には、次のような流れになります。

売上(生産活動収入)- 材料費(原価)- 経費(光熱費・人件費・備品など)  
                =
             残り(利益部分)    
                ↓    

           工賃として利用者に分配

つまり、生産活動収入は「売上」ではなく、“工賃を生み出すための原資”という位置づけです。

「工賃」とはなにか?

工賃とは、利用者さんが生産活動に参加した成果として受け取る報酬のことです。
法律上は「賃金」ではなく、“作業の成果に応じた分配金”として扱われます。

給与(雇用契約)ではなく、支援の一環としての報酬、したがって、最低賃金の適用はなく、分配方法は事業所ごとに異なります。

売上と工賃の関係

たとえば、ある月の売上が100万円の事業所があったとします。

項目 内容 金額
売上(生産活動収入) 印刷・販売などの収益 1,000,000円
材料費・経費 紙・包装・燃料・備品など 600,000円
利益(分配原資) 400,000円
利用者への工賃 月20人に平均2万円ずつ 400,000円

つまり、利益部分がすべて工賃として還元されている状態です。

<注意>
「工賃を上げたい」と思っても、経費が増えれば工賃原資は減ります。逆に、原価を抑え、販売単価を上げれば工賃を伸ばすことができます。

工賃アップの基本式

工賃 = (売上 - 経費) ÷ 利用者数

このシンプルな数式に、B型事業所の“経営課題”がすべて詰まっています。

・売上を上げる(販路拡大・単価アップ)
・経費を減らす(仕入・材料・ロス削減)
・利用者を適正配置(作業効率・参加率アップ)


<行政書士の視点>
工賃アップは「経営」だけでなく「制度的努力」も関係します。たとえば「目標工賃達成指導員加算」など、報酬面の仕組みを活用すると、活動全体が安定します。

よくある誤解

1,「売上=工賃」ではない
 → 経費を引いた残りが工賃原資。経営管理が欠かせません。
2,「工賃は給付費で補える」ではない
 → 給付費は支援の報酬であり、工賃原資ではありません。
3,「活動を増やせば工賃が上がる」ではない
 → 量ではなく、単価と効率が重要です。

 工賃アップの視点

視点 内容 行政書士のサポート例
経営 収益構造の見直し・原価管理 工賃アップ計画書の作成支援
制度 加算の活用・体制届の整備 目標工賃達成指導員加算などの届出
契約 取引契約書・覚書の整備 契約条件・納品トラブル防止
会計 工賃支払台帳・帳簿管理 実地指導での証拠整備

工賃アップは“数字の話”ではなく“信頼の話”

工賃が安定して支払われると、
・利用者さんのやる気が上がる
・職員の支援意識が高まる
・地域企業からの信頼が深まる

つまり、工賃は「事業の信頼度」を映す鏡ではないでしょうか

次回のブログはコチラ⇒<就労継続支援B型事業所(お金に関すること)⑭>生産活動収入の会計と書類整備<~行政書士が解説~>

2025年11月03日 16:01

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑫>生産活動収入のつくり方<~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。

前回は、「生産活動収入とは何か?」をテーマに、給付費とは異なる“もうひとつの収入の柱”についてお話ししました。

前回のブログはコチラ⇒<就労継続支援B型事業所(お金に関すること)⑪>生産活動収入とは?<~行政書士が解説~>

今回はその続きとして、「どうやって生産活動収入を生み出していくのか?」実際の導入ステップと行政手続きのポイントを整理してみます。

 スタートは「何をやるか」ではなく「なぜやるか」

最初の一歩で大切なのは、「なぜこの活動をやるのか」という目的づくりです。

・利用者さんに合った仕事をつくりたい
・地域とつながる活動をしたい
・工賃を上げて利用者のやりがいにつなげたい
この“目的の整理”ができていないと、どんな活動を選んでも長続きしません。

 <行政書士の視点>
目的が明確になると、「どの法令に関わるか」「どんな届出が必要か」が見えてきます。

代表的な生産活動の形

B型事業所でよく見られる生産活動を、分野別に整理すると次のようになります。

分野 内容 特徴
印刷・デザイン 名刺・封筒・パンフレットなど 機械作業+デザイン要素、企業連携しやすい
菓子・食品製造 クッキー、パン、ジャムなど 利用者参加度が高く、地域販売しやすい
農業・園芸 野菜・花の栽培、農福連携 季節変動があるが地域連携効果大
内職・下請け 梱包、組立、シール貼りなど 初期投資が少なく、導入しやすい
清掃・リサイクル 公共施設清掃、古紙回収 安定受託につながりやすい

 導入のステップ

生産活動は、次の4段階で考えると整理しやすくなります。

段階 内容 行政書士が関われる部分
① 構想 目的・内容・必要設備を整理 事業計画書の作成支援
② 試作・テスト 小規模に試して反応を見る 取引契約書・覚書の整備
③ 販売・受託開始 販売・納品を実施 契約書・請求書・帳簿整備
④ 体制整備 工賃計算・記録管理・リスク対応 規程改定・手続届出・監査対策

< 行政書士の視点>
「いつ始めるか」より、「どの段階で届出が必要か」を見極めることが重要です。例えば、建物の用途変更や消防設備の追加は“販売開始前”に確認が必要になります。

 法的手続きの注意点

生産活動は、福祉でありながら“事業”でもあります。
そのため、次のような法令や行政確認が関わります。

分野 主な手続き・確認項目
都市計画法 用途変更(例:作業室→店舗・製造室)
建築基準法 建物構造・避難経路の確保
消防法 火気使用・製造設備の設置
食品衛生法 菓子・食品を扱う場合の営業許可
農地法 農地を利用する場合の転用・賃貸借

こうした手続きは、始めてからでは間に合わないこともありますので、事前に「構想段階」で確認することで、後のトラブルを防げます。

 よくあるパターン

1,事業開始後に用途変更が必要と分かり、工事が止まる
2,販売開始後に消防設備の指摘を受ける
3,取引契約書がなく、代金未回収トラブル
4,経費が増えて工賃が上がらない
5,担当者が1人に集中して活動が続かない

導入のポイント

1,小さく始めて、成果を積み重ねる
2,「売れるか」より「続けられるか」で判断する
3,職員と利用者の“得意”を活かす
2025年11月03日 15:42

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑪>生産活動収入とは?<~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。

就労継続支援B型事業所の経営を考えるうえで、「給付費」と並んで重要なのが“生産活動収入”という考え方です。
これは、制度上もしっかり位置づけられた“もうひとつの収入の柱”です。

今回は、その「生産活動収入」とはどんなお金なのか、そしてなぜ今それが注目されているのかを、行政書士の視点からわかりやすく整理してみます。
 

生産活動収入とは

事業所が、利用者さんと一緒に行う“仕事”から得る売上のことです。
国や自治体から入る「給付費(サービス報酬)」とは異なり、生産活動収入は、事業所が自ら活動して得る収益です。
たとえば・・
・企業からの下請け・内職作業
・印刷、デザイン、清掃などの受託業務
・お菓子や雑貨、農作物の販売
・ネットショップや地域イベントでの販売

こうした活動から得た売上金が「生産活動収入」として計上されます。

給付費=「支援の対価」、生産活動収入=「仕事の対価」
つまり、「福祉」と「経済活動」が交わる部分です。

 “仕事の収入”が生まれる仕組み

生産活動収入は、利用者さんの作業によって得られる「事業収益」この収益から、材料費や経費を引いた残り工賃(利用者さんへの支払い)となります。

<仕組みイメージ>

生産活動による売上   
  ↓
材料費・経費を差し引く   
  ↓
残り=工賃(利用者さんへ)

この構造を理解しておくと、「なぜ工賃を上げるには“売上”が必要なのか」が見えてきます。

 給付費との違い

項目 給付費収入 生産活動収入
性質 福祉サービスの報酬 仕事の売上
支払元 国・自治体 企業・一般顧客
安定性 高い(月ごとの入金) 変動が大きい
管理方法 請求システム(国保連) 事業会計(売上帳)
監査対象 実績報告・届出 帳簿・工賃台帳・契約書

<行政書士の視点>
「生産活動収入」は“商取引”の性質を持つため、契約書・見積書・納品書などの事業書類整備が求められます。

“作業”から“しごと”へ

かつてB型事業所では、「軽作業」「内職」という言葉が一般的でした。
しかし、国の方針は今・・・“多様な生産活動の推進”に移っています。
「作業」ではなく「しごと」として地域の中に参加する。

地域の企業やお客様から「ありがとう」と言われる仕事をすることが、
利用者さんの自信ややりがいにつながります。

 生産活動収入の“意義”

生産活動収入は、単にお金を稼ぐためのものではありません。
それは、利用者・職員・地域の3者をつなぐ「関係性の証」です。

・利用者にとって:社会参加と働く喜び
・職員にとって:支援の成果を見える化
・地域にとって:福祉との協働・CSRの形
 つまり、生産活動収入とは、“地域の中で役割を果たすための経済的しくみ”です。

次回のブログはコチラ⇒<就労継続支援B型事業所(お金に関すること)⑫>生産活動収入のつくり方<~行政書士が解説~>
2025年11月03日 15:15

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑩>加算を経営に活かす <~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。

これまで4回にわたり、「加算制度」の仕組みや届出・監査対応を見てきました。
今回は、少し視点を変えて・・「加算を経営の力に変えるにはどうすればいいか?」というテーマでお話しします。
 

 加算は「報酬」ではなく「仕組み」

加算は“努力の結果としてもらえるお金”ですが、本当の価値はそこにとどまりません。

実は、加算制度を活かせる事業所ほど、

・職員が育ち
・利用者の工賃が上がり
・経営が安定している
という共通点があります。

加算を「単なる報酬の上乗せ」ではなく、“組織を成長させる仕組み”として位置づけることが大切です。

 ① 処遇改善加算は「職員のモチベーション投資」

処遇改善加算は、職員の給与を上げるための制度です。
単に「もらって終わり」ではなく、職員が定着し、質の高い支援を続けられる土台づくりにつながります。

たとえば
・加算を原資に「資格取得支援」や「研修制度」を整える
・職員アンケートで賃金以外の改善点を把握
・改善計画を“全員で共有”し、達成を実感できる仕組み

② 目標工賃達成指導員加算は「生産活動の起爆剤」

工賃アップを目的に配置する「目標工賃達成指導員」です。
この加算は、“数字を上げるための人件費補助”ではなく、生産活動を事業として確立するきっかけです。

・生産活動の見直し → 原価計算・作業工程の整理
・新しい取引先の開拓 → CSR連携や委託契約
・製品販売やイベント参加 → 利用者のやりがいアップ

③ 地域連携加算は「信頼を広げる名刺」

地域連携加算は、他機関と協力して支援を行う取り組みを評価します。
これは、単なる報酬ではなく“地域社会との信頼の証”です。
・医療機関・企業・学校・自治体などと協定を結ぶ
・連携会議・合同イベントなどで地域に顔を出す
・協働記録を残し、次年度の届出や加算更新につなげる

④ 加算を「経営指標」として見える化

毎月の給付費・加算収入を「見える化」しておくと、経営改善のヒントがたくさん見えてきます。

指標 内容 改善の方向
稼働率 利用者出席率 通所支援・送迎体制の見直し
職員配置率 加算に必要な人員体制 離職防止・採用計画
加算取得率 取れる加算のうち、実際に取得している割合 書類整備・要件確認
工賃平均 利用者の月平均工賃 生産活動・販路強

 ⑤ 加算を“経営会議のテーマ”に

毎月の経営会議や職員会議で、「加算の状況」を共有することが、現場意識を変えます。
・「今月はどの加算を満たせたか」
・「来年度に新しく取れる加算は?」
2025年11月03日 14:53

<就労継続支援B型事業所(お金編)⑨>加算の“落とし穴”<~行政書士が解説~>

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こんにちは、行政書士の大場です。
加算制度は“努力を評価する仕組み”ですが、書類や運営体制に少しでもズレがあると支払いが止まるという、意外にシビアな世界です。

今回は、現場で本当によくある「加算の落とし穴」と、監査で見られるポイントを整理します。

 

 よくあるミス①:届出と実態が一致していない

もっとも多いのがこのケースではないでしょうか?
届出上は条件を満たしていても、実際の勤務体制や記録が違うために、後から「不適正算定」と判断される例です。

・職員が退職したのに変更届を出していない
・新任職員の資格証を添付していない
・運営規程を古いまま使っている
・サービス提供時間が短く、加算要件を満たしていない

< 行政書士の視点>
加算届は“約束”、記録は“証拠”。この2つが食い違うと、加算が取り消されます。

よくあるミス②:書類を“揃えるだけ”で中身が伴っていない

実地指導では「書類の有無」よりも「内容の整合性」が重視されます。
例えば

・処遇改善加算の“職員会議議事録”がテンプレートのまま
・定着支援加算の“支援記録”が同一文言コピー
・工賃向上加算の“計画書”に実施報告がない
“形だけ書類を作る”と、行政はすぐに見抜きます。書類は「現場で本当に取り組んだ証拠」を残すこと。

 よくあるミス③:加算終了後の処理忘れ

加算は、体制変更・退職などで要件を失うと自動で無効になります。
しかし「届出解除」を忘れて請求を続けてしまうと、過誤請求(返還対象)となります。

たとえば
・工賃指導員が退職しても、配置加算を継続請求していた
・処遇改善加算の実績報告を提出していないのに請求継続
この場合、行政から「半年分の返還」を求められることもあります。

よくあるミス④:運営規程の改定漏れ

加算を取る際には、運営規程にも「加算に関する項目」を追記しておく必要があります。

たとえば
・処遇改善加算 → 職員への賃金改善の取組を明記
・地域連携加算 → 関係機関との連携体制を明記

🟢 行政書士の視点
規程改定は“届出の一部”です。実地指導で「規程に加算内容が書かれていない」と指摘されます。

よくあるミス⑤:年度更新・報告忘れ

特に処遇改善・ベースアップ加算は、毎年「計画届+実績報告」が必須です。
報告を忘れると、翌年度の加算が認められず、さらに「前年度分の返還」を求められることもあります。

実地指導(監査)で見られるポイント

実地指導で“加算関連”として確認される項目は、おおむね次の4点です。

チェック項目 内容
届出書の確認 いつ・どの加算を届け出たか
添付資料の整合性 勤務表・資格証・会議録など
要件充足の確認 実際に取り組んでいるか
記録の保存 支援記録・議事録の保存期間・日付の一貫性

監査担当者が見るのは「要件の根拠と証拠」です。

次回のブログはコチラ⇒
<就労継続支援B型事業所(お金に関すること)⑩>加算を経営に活かす <~行政書士が解説~>

2025年11月03日 14:24