<就労継続支援B型事業所(お金編)⑱>工賃設定<~行政書士が解説~>
こんにちは、行政書士の大場です。
「工賃をいくらに設定するか?」これは、B型事業所の経営で必ずぶつかる壁です。
「ほかの事業所が◯◯円だから同じでいい」、「売上が少ないから仕方ない」そんな“なんとなくの工賃設定”になっていませんか?
今回は、どうやって工賃金額を決めていくのかを、3つの考え方に分けて整理していきます。
① 工賃設定の基本の考え方
工賃とは「活動の成果をどのように分配するか」を決める仕組みです。
つまり、経営と支援の両面から“納得できるルール”をつくることが大切です。
設定の際は、次の3点を意識します。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 公平性 | 作業内容・時間・能力に見合っているか |
| 透明性 | 算出根拠を説明できるか |
| 継続性 | 法人として無理のない金額か |
< 行政書士の視点>
工賃の金額よりも、「なぜこの金額なのか?」を説明できることが重要です。
行政もそこをチェックしています。
② 工賃設定の3つのパターン
B型事業所では、工賃の決め方に大きく3つの方式があります。
| 方式 | 内容 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| ① 時給制 | 勤務時間に応じて支給(例:時給150円) | 一般就労に近く、分かりやすい。作業量に差が出にくい。 |
| ② 出来高制 | 作業成果に応じて支給(例:完成1個=20円) | モチベーションが上がりやすいが、作業内容によって不公平が出やすい。 |
| ③ 定額+成果連動型 | 基本額+出来高(例:月5,000円+成果分) | 安定性とやる気を両立できる。管理は少し複雑。 |
③ 実際の計算例
たとえば、月の生産活動収入が 300,000円 の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総生産収入 | 300,000円 |
| 材料費・経費 | 100,000円 |
| 残り(工賃分配原資) | 200,000円 |
| 利用者数 | 10人 |
| 一人当たり平均工賃 | 約20,000円(月額) |
ここで重要なのは、「どう分配するか」のルールを明確にしておくことです。
・成果に応じてポイント制で分配
※「責任・難易度によって係数を設定」というのは、同じ時間・同じ作業量でも、“仕事の重さ”を考慮して工賃を配分する仕組みのことです。
※「成果に応じてポイント制で分配」というのは、利用者一人ひとりの“作業成果”を見える化して、ポイントとして集計し、その合計ポイントに応じて工賃を分配する仕組みです。
④ 不公平感を防ぐためのポイント
「同じ時間なのに金額が違う」「あの人ばかり多い」
工賃をめぐるトラブルの多くは、“説明不足”から生まれます。
| よくあるトラブル | 対策 |
|---|---|
| 作業内容による差が不明確 | 作業ごとの単価表を作成する |
| 欠席時の扱いが曖昧 | 欠席・遅刻時の減額ルールを明文化 |
| 成果の評価が主観的 | 指導員2名でのダブルチェック体制 |
| 工賃計算の根拠が不明 | 計算表を毎月ファイルに保管 |
< 行政書士の視点>
工賃は“トラブルの種”にも“信頼の証”にもなります。
明文化しておくことが、法人・利用者・職員すべてを守る仕組みです。
⑤ 「工賃規程」を作るメリット
法人ごとに「工賃の算出・支払い・説明方法」をまとめた工賃規程を作っておくと、運営が格段にスムーズになります。
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